ネオトルネーダー

2017.09.16
第一巻 湖水地方レポート

■ネオトルネーダー

湖水地方牧場では、3年前のチーズ工房新設時に、排水を地下浸透で対処すべしと、北海道庁から指導を受けて、直径900mmのコンクリート製浸透桝を2本設置した。それぞれを沈殿槽として、2本目の桝のオーバーフローが、牧場の明渠に流れ出る。チーズ製造時の乳清/ホエイは、同じ地域の養豚家が使ってくれるけれど、廃棄乳もたまにはあるし、チーズの滓もバカにならない。

牛は、お産直後の1週間は、ミルクを仔牛にやるが、全部は飲み切れない。余ったミルクは免疫抗体が大量に含まれていてチーズにはならないし、飲用乳としても販売しないから廃棄。

乳房炎に罹患すれば、その牛のミルクも廃棄する。抗生物質を打てば、それぞれの薬の残存期間のミルクを、やはり廃棄する。

ミルクのBODは100,000mg/L以上とされていて、自然界に大量に流出すれば、まちがいなく腐敗して汚染源となる。合併浄化槽では、太刀打ちできる相手ではない。堆肥に撒いて、堆肥化している酪農家もあるが、大変な腐敗臭で、しかも堆肥の水分率を上げて発酵に支障が出る。始末に困って、畑にまいてしまう農家もある。違法ではないが、汚染による地力への悪影響は避けられない。

搾乳時の排水や、チーズ工房の排水には、洗剤の界面活性剤や、アルカリ洗剤に溶けたミルクが、沈殿することもなく流れ出ていく。暑い夏になると、明渠から腐敗臭が立ち上る。かれこれ3年間チーズ製造を続けてきて、自然環境に対する負荷が大いに気になっていた。植物による生物浄化は機能しているだろうが、対策の意識化が必要だった。

 

ネオトルネーダー.jpgのサムネール画像

二年前に札幌で食品機械展を歩いた際に、レストランのグリストラップの中で、油を分解する機械が紹介されていた。ネオトルネーダーという新しく開発された機械だ。浄化槽の底に設置して、空気を送り込む簡単な仕組みに見えるが、時速100km以上の速度で空気を渦巻き状に放出し、液中に存在する微生物を活性化、タンパクや脂肪分などの固形物を破砕して、微生物に食べさせるのだという。

聞いてみるとミルクも分解する、と。こちらの課題を相談すると、牧場に来て試験してくれた。浄化槽で、初日に850あったBODは、10日後には170に減少した。それ以来、いつか導入したいと考えてきたが、この8月に、思い切って導入に踏み切った。

 

DSC_0140小.jpg

 

二年ぶりにふたを開いた浄化槽の中では、汚泥が硬化して表面に浮いて見えた。

ネオトルネーダーを設置した直後には、浄化槽の底に沈殿していた汚泥が、激しい水流に巻き込まれて泡になり、地上にはみ出してきた。翌日は、泡がいくらか沈静化したが、まだブクブクだ。

 

DSC_0156小.jpg

 

3日後の8月22日、サンプルを採取した。BODを計測してもらったところ、5200mg/Lという、驚くほど高い数値だ。腐敗臭がわいてくる。

 9月5日、だいぶ透明度が増してきたところで、2度目のサンプルを採取した。

 

DSC_0176小.jpg

 

 ネオトルネーダー開発者の宮野入研治氏に、状況を報告したところ、以下のような返信があった。

 

 BODの検量につきましては、しばらくは検量結果にバラツキが生じるかと思いますが、3か月程度で安定した状態になると考えています。

 ネオトルネーダー稼働と同時に微生物の生態系が目まぐるしく変動します。初期に好気性微生物が一気に増殖し汚水中の酸素を消費します。次第に嫌気性微生物が増殖し、場合によっては糸状菌増殖によってバルキングが発生しますが、数日後には糸状菌を捕食する菌類が増殖し、次第に菌類の食物連鎖体系が整い、浄化力が高まって行きます。 

先にお送りしました静岡県畜産技術研究所のDETA(注:パーラー排水槽にネオトルネーダーを設置する試験)で注目すべきは、ORP(酸化還元電位)が当初-67から急激に+347mVに変化したこと、即ち酸化分解が高まったことは、浄化力が高まっている事が伺えます。

 この1週間以内で、検量結果に大きな変化がでてくると期待しています。」

 

 引き続き数値化を継続しながら、事態の推移を注視したい。

ページトップへ戻る