ココナッツ/557誕生

2017.10.23
第一巻 湖水地方レポート

コヨニ/542の子供だ。海岸草原のブラウンスイス。ココロン/556に続いて耳標番号は557、ココナッツと名付けた。メスだから、これから長く家族として一緒に暮らすことになる。

昨夜、妻の温紀が「542が生まれそうだから、分娩房を作ろうよ」と言う。わざわざ分娩房には入れないのだが、今夜から雨降りの予想だから、念のために、堆肥舎にしているハウスを開けて、牛が入れるように設えた。堆肥舎だが、積み上げる堆肥はないので、普段は乾草置き場にしている。だから、床は乾草が敷き詰められた、ふかふかの状態で、分娩には最適だ。そして翌朝、542はちゃんとその中で、分娩してくれた。 ココナッツ.jpg

 

すでに何十という分娩に立ち会ってきたが、出産という奇跡に立ち会うのは、素晴らしい。心が晴れやかになる。水牛もサンキュー/39の子が生まれて、10月にすでに5頭の分娩を経た。

ウシは立ったまま分娩するので、羊水が膣から滝のように流れ出るとともに、ドサッという音を立てて胎児が地面に落ちる。ターミネーターという映画の冒頭に、未来から来た男が地面にドサッと落ちる、まるで、あんな感じ。仔牛はすぐに立ち上がり、母親の乳房をまさぐって初乳を飲む。

母牛は、別の牛が仔牛を構うので、そのたびにかばう。乳もやらなければならない。だから、仔牛のそばを離れられない。早朝の分娩だったが、夕方にはココナッツのお尻を押してやると、400mほど離れた搾乳所に向かって歩き出した。母の542も後になり、前を歩きながら、一緒に移動。ココナッツは、途中で疲れ果てて座り込んだが、しばらくすると意を決して立ち上がり、再び搾乳所をめざして見事にゴールインだ。ココナッツはそのまま仔牛舎へ収まって爆睡。542は特段の反応もなく、腹が減ったらしく、乾草の草架に向かっていつまでも食べ続けた。

 

放牧している海岸草原の草も、もはや新しい成長は期待できない。ブラウンスイスたちは毎日草地に出て草を食むが、粗飼料の大部分を乾草に頼るようになる。するとミルクは柔らかくやさしい風味で春まで安定する。11月に入ったら、様子を見て放牧地を閉じ、すっかり分解の終わった堆肥を撒いて放牧の季節を終えることになる。  29.10.23

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