トーマス・アコスタ先生と水牛繁殖

2017.11.08
第一巻 湖水地方レポート

帯広畜産大学のトーマス・アコスタ/Tomas Acosta准教授は、家畜繁殖学の専門家だ。一昨年、岡山大学生殖補助医療技術教育研究センター長をしていた奥田潔教授が、出身校である帯広畜産大学長として赴任する際に、愛弟子のアコスタ先生を連れてきた。

 

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中米のパラグアイ出身で、岡山から北海道に移る際に奥田教授に対して、ホルスタインの繁殖学はほとんどやりつくされているので、水牛に取り組みたいと申し出た経緯があったそうだ。ベトナムから研究者が岡山大学に来ていたので、ベトナムを往復しながら研究するつもりだったが、北海道十勝に来て湖水地方牧場に出会った。水牛を研究対象としながら様々な研究助成金を申請して、湖水地方牧場の手助けをしてもらっている。とてもありがたい。

畜産業者は、伝染病を極端に恐れる。ひとたび牧場内に伝染病が発生すれば、牧場内の全頭に容易に感染する。他の牧場に感染しようものなら、地域から総スカンに合うのは明らかだ。家畜の病気を管理しているのは、家畜保健衛生所で、都道府県の管轄である。ここでは水牛を、牛と同等に扱い、管理指針を示している。

しかし、農業共済組合は、水牛を共済の対象に入れていない。したがって、ブラウンスイスは、何かあれば共済組合の獣医さんが飛んで来て対処してくれるが、水牛は手を触れてもらえない。水牛を導入した当初、自営の獣医さんが手を挙げてくれたが、法外な固定費支払いを求められたので手が出なかった。

本別でバイオダイナミック農場を経営しているキャンベル夫妻のところに、足寄を拠点に自営している獣医が来ていて、お願いしたところ気持ちよくきてくれた。しかし、足寄から湖水地方牧場までは、少なくとも100kmの道のりだ。無理があった。

ある日、飼い犬のセントバーナード用に、地元の獣医さんが狂犬病注射を届けに来た。事情を話したところ、30kmほどの距離にある中札内の山口佳生獣医師を紹介してくれた。山口先生は気持ちよく来てくれて、アコスタ先生をご紹介してくださったのも山口先生だ。

こんな具合で、水牛牧場を経営するには、多くの難題がある。そして、たくさんの人々のご厚意に支えられてここまできた。

この日、アコスタ先生は、ベトナム・フエ大学の研究者Duong Thanh Hai博士と、大学の学部生一人を伴ってきて、育成の水牛4頭の妊娠確認のために、直腸検査を行った。新しいエコー診断装置が入ったからと、嬉しそうに見せてくれた。

 

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4頭のうち、3頭は妊娠。残りの1頭は、もしかしたら妊娠しているが、日が浅いので分からないのかもしれない。

ベトナムにはたくさんの水牛がいるが、使役用だ。Duong博士は、今後、タンパク源確保のために、イタリアから精液を輸入して掛け合わせ、使役兼ミルク水牛を育成したい。チーズ製造に取り組む日が来るから、その時は応援に来てね、と頼まれたので、引き受けると申し上げた。

アコスタ先生の診断は、研究目的と位置付けているため、無償の仕事だ。モッツァレラチーズを土産にお持ち帰りいただいた。29.11.8

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